宮廷女官 若曦のこと(ねたばれあり)

というわけで、もう一つの清朝辮髪ドラマ、宮廷女官若曦です。
日本語だと「きゅうていにょかん じゃくぎ」って読ませてるわけですが、若曦はピンインだとruoxiみたいな発音になるので、ルオシーとかルーシーとかに聞こえるんですよ。

アジア・リパブリックによればこの邦題は「宮廷女官チャングムの誓い」に影響されたそうなのですが、だったら、「若曦」に「じゃくぎ」とルビをふらずにルオシーにすればよかったんじゃないのかなあ。
原題は「歩歩驚心」です。ハラハラドキドキ、みたいな意味の造語?あと、中国のサイトだと歩歩惊心とかになってるところもあるんですがなんかよくわかんない。

でまあ、ストーリーですが、タイムスリップものです。現代女性が彼氏とケンカして事故にあって目がさめたら清朝康熙帝の時代で、第八皇子の側室である姉のところに身を寄せて宮女選びの日を待っている状態。で、一応は元の時代に戻ろうとあれこれやるのだがあきらめてこの時代で生きていくことになる。

ふつうこのテのタイムスリップものって割と短いスパンで元の時代に戻れたりするんですが、そこは大陸ドラマ、たぶんドラマ中では十数年が経過します。

中身は現代女性なのでその価値観とかを面白がられて、何人かの皇子と仲良くなったり、康熙帝に気に入られてお茶出す係の女官として側近として重用されたりしているうちに、第八皇子と愛しあうようになる。おいおい姉の夫だぞ第八皇子は。でも現代人で歴史が好きな中の人は第八皇子の悲惨な末路を知っているわけです。歴史を変えてしまうことを覚悟して、第八皇子に「私を娶りたいなら皇位はあきらめて」というけど聞き入れられず、決別。

傷心の主人公は今度は第四皇子と思い思われる仲になる。この第四皇子を演じているのが、台湾版少年隊であるところの小虎隊の元メンバー、ニッキー・ウー。ここから先の話はほぼ、主人公と第四皇子のラブストーリーとなるわけですが。

皇太子の廃位、第八皇子グループ(八、九、十、十四皇子)による第四皇子グループ(四、十三皇子)への罠(これによって主人公の最大の親友である第十三皇子が幽閉されてしまい、第四皇子は晴耕雨読生活で政治から離れる)、第八皇子の失脚と第十四皇子の台頭を経て、皇帝は主人公を第十四皇子に嫁がせようとし、第四皇子を思う主人公はそれを拒否して康熙帝の逆鱗に触れ、洗濯係に降格されてしまうのです。
(で、ややこしいのは、第四皇子と第十四皇子は母親が同じなのですが、この二人は仲が悪い。で、早くに母を亡くしてその二人の母親に育てられた第十三皇子は、第十四皇子とも仲がよいのだけど第四皇子の最大の理解者なのです)

やがて康熙帝が自らの寿命を知り主人公を呼び戻すのですが、ほどなく康熙帝崩御。このへん、毒殺説とかいろいろあったりするようですが、よくわからない。で、康熙帝の側近を取り込んでいた第四皇子が、「側近が皇帝の最期の言葉を聞いた」として後継者として即位して雍正帝となります。

勅命で大将軍として西方の討伐から凱旋した第十四皇子は納得できないし、元の第八皇子派も第十四皇子こそが皇位にふさわしいと思っている。なので雍正帝はそれらの不満分子をびしばしと粛清していきます。
主人公はやっと第四皇子あらため雍正帝と結ばれてラブラブな日々、かと思いきや、あの時代ですから側室はじゃんじゃかいるわけで、中の人は現代人ですからやっぱりそのへんつらいわけです。それに、どの皇子ともそこそこ仲が良かった主人公は、兄弟を幽閉だの監禁だの側近を処分だのする皇帝の冷酷さに恐怖を覚える。でも、好きだから離れられないんですね。

そうこうしてるうちに主人公妊娠。しかし、第八皇子の処分を緩めるよう嘆願して叶わなかった第九皇子は、第八皇子が第四皇子グループを陥れたのは、主人公が第八皇子と決別する間際に「第四皇子に気を付けて」と言ったことが原因だと主人公に告げる。大親友だった第十三皇子の幽閉と、第四皇子のくるしみが自分が原因だと知った主人公は流産したうえ、二度と身ごもれない体に。

やがて内心の呵責に耐えかねた主人公は雍正帝にそのことを告げると、雍正帝は怒りで主人公を遠ざける。(ここらへんのスモールアスホールぶりは宮廷の諍い女でもいろいろ出てきます。雍正帝ってそういうキャラが確立してるのかしら)

耐えられなくなった主人公、第十三皇子に頼んで第十四皇子に伝言を伝える。第十四皇子はそれにしたがって、康熙帝の「主人公を第十四皇子の側室とする」という詔書雍正帝に示し、主人公は宮廷を出て第十四皇子の宮で生活することになる。

体が弱っていて余命もあとわずかな主人公は第十四皇子の宮で心安らかに暮らすが、いよいよ死ぬ間際となってやっぱり雍正帝に会いたくて手紙を書く。手紙を読めばきっと会いにきてくれると信じる主人公だが、第十四皇子からの手紙はどうせ挑発だろうと読まずにいた雍正帝は、待ち続けた主人公が死んで、遺言どおり火葬されて灰になってからやっと第十四皇子のところにやってくる。

そこで主人公の骨をひきとって、彼女の遺言通り散骨する。

‥‥とまあこんな感じなのですが。

私は第十四皇子役の林更新(ケニー・リン)くんにべたぼれなので、このストーリーを第十四皇子視点でみちゃうんですが、そうすると、最初は主人公と仲の良い第十三皇子をうらやんで、どうすれば自分もそういう風に仲良くできるのか、思い悩んでいる姿がかわいいし、敬愛する第八皇子ではなく敵対する実の兄の第四皇子を選んだ主人公をなじったりもするものの、冷たくはしきれず、第十三皇子幽閉の件でも力になり、康熙帝にも何度も主人公を娶りたいと申し出てる。ある意味、主人公を一番支えて、一番大事に思っていたのはこの人なんじゃないのかと。

最期主人公が火葬された遺骨というか灰は雍正帝が引き取っていくのだけど、「死んでからまで自分の妻を奪っていくのか」みたいなことを叫ぶ(らしい。まだそこは見ていない)のとか、ほんとどこから見てもかわいそうだなあ、と。

(そしてこの雍正帝と第十四皇弟との確執は、宮廷の諍い女にもちらほら出てくる)

長々と書きましたが、美しい辮髪男子がわしゃわしゃ出てる、というのがこのドラマの見どころです。衣装なんかは宮廷の諍い女のほうがきれいだけど。

あ、最期に大事なこと書くのを忘れてた。

タイムスリップものにおける「歴史の自己修復作用」(であってたっけ?)は、このストーリーでは、雍正帝がやきもちやきで、主人公に関する記録をすべて捨てた、十四皇子との結婚も嫉妬から正式なものとは認めず、記録に残さなかった、という形で表現されています。

火葬されたあと主人公は現代にもどるのですが、そのあと清朝の展覧会を見て、自分のいた痕跡を探すもののどこにもみつからない、ただひとつ、一枚の絵の中に自分の姿を発見する、というのがエピローグです。そこでニッキー・ウーの演じる第四皇子クリソツのイケメンとであうのですがそれは蛇足だよな。

あと、高貴な身分のイケメンたちに主人公がモテモテ、みたいなのは、女性が書いたネット小説だよなあ、っていう感じがします(はしょったけど、上の三人のほかに第十皇子も主人公に熱をあげていたし、蒙古王から娘の姉認定をされれたために、政治的な理由から皇太子も主人公を娶ろうとする)。まあハーレム小説の男女逆版と言えなくもないか。

ちなみにちなみに、こっちで雍正帝を演じているニッキー・ウーと、宮廷の諍い女で雍正帝を演じている陳建斌とは、同い年なんですけど、みた感じがあまりに違うので笑えます。肖像画なんかを見た限りでは、似てるのは断然陳建斌のほうなんですけど。