宮廷の諍い女のこと(脇役のおはなし)

というわけで、飽きもせずに宮廷の諍い女の話をします。

ドラマの一番最初、甄嬛は侍女たちと一緒にお寺に願をかけにいくんですね。(ここでわかるのは、清朝は仏教国だということですね)甄嬛がお願いしたのは、「秀女に選ばれませんように」ということでした。ただ一人の想い想われる相手と添い遂げたいと願っていた甄嬛にとって、皇帝の側室になるなんて避けたいことだったわけです。

その帰り道、顔なじみの医師、温実初からプロポーズされる。甄嬛が後宮入りを望んでいないのを知っている温くんは、自分はまだしがない駆け出しの医者だけど、一生懸命幸せにするから、と家宝の玉の壺(といっていたけど急須みたいな形だったような?)を渡すのだけど、甄嬛は「あなたのことは兄のように想っているけれど、夫婦にはなれない。それに、秀女の候補になったら終わるまでは結婚できない」と断るわけです。がっかりする温くん。
(二人の関係は、甄嬛のお父さんが温くんのお父さんの恩人、ということのようです)

このとき、温くんは甄嬛のことを「嬛(ふぁん)」って呼んでるんです。

甄嬛が後宮入りしたあと、温くんは甄嬛の主治医になります。そうなると温くんはもう「嬛」とは呼べないんですね。「娘娘(にゃんにゃん)」と呼ぶことになります。

やがて、甄嬛の一番の親友である沈眉荘が、妬まれて罠にはめられ謹慎を命じられたり疫病にかかったりいろいろあって、温くんに想いを寄せるようになる。でも温くんには甄嬛しか見えていない。眉荘さんはこのころ、皇帝の寵愛争いからは完全に身を引いて、皇太后のお世話をすることに後宮での居場所をみつけていたわけです。

さらにずっとたって、子供を産んだ甄嬛が出家して甘露寺で修行をしているときに、温くんは何度か診察(というか様子見)にくるのですが、そのときはもう後宮の人ではないので再び呼び名は「嬛」となります。で、出家中に甄嬛は皇帝の弟であるところの果郡王と深い仲になるのですが、それを知った温くん、「どうして私じゃなくて彼なんだ」と憤懣やるかたないのだけど、甄嬛から「あなたが望むのは私と結ばれることなのか私の幸せなのか」と尋ねられ、「結ばれないのならばせめて幸せを願います」とかいうわけですね。いい男じゃないですか温くん。果郡王と甄嬛のために仮死状態になる薬を処方(死んだことにしないと皇帝の管理下から出られない)したりとか、甄嬛のお父さんが病気と聞けば様子を見に行ったりとか、ほんと温くんは甄嬛に尽くします。

果郡王が勅命で西方に行っている間に、甄嬛懐妊。しかしそこに果郡王が死んだとの一報が。ショックを受ける甄嬛に、「おなかの子は自分の子として愛するから、私と一緒になってくれ」という温くん。ここらへんちょっと現代の感覚でいうと弱みに付け込んだ感じがしないでもないけど。だけど、父親の病気が重なって、子供と家族を守るために後宮に戻ることを画策する甄嬛。温くんはかわいそうに「あなたでは私は守れても私の家族を守れない」といわれてがっくり。で、仕方なく?温くんは協力するわけです。妊娠の月数をごまかして皇帝の子であることにし、後宮に戻る甄嬛。

後宮に戻る直前に、実は生きていた果郡王が帰ってくるわけなんですが、ここの涙涙のシーンはわたし的に三大名場面のひとつだと思うけど今は温くんの話なのでさくっと割愛。

後宮に戻った甄嬛を眉荘さんはもちろん喜んで迎えるわけですが、面白くないと思う人もいて、ここらへん温くん出番たくさん。そんなある日、皇太后のはからいで皇帝と食事をする眉荘さんだけど、やっぱりぎくしゃくした雰囲気は隠せず、皇帝はほかの側室のところへ行ってしまう。皇太后から送られた男女が仲良くなるお酒(媚薬でも入ってるのか?)を手酌で飲みながら酔ってクダをまく眉荘さん。宮女が気を使って温くんを呼ぶと、今度は温くんにからみ酒。で、そういうお酒ですから、温くんは眉荘さんをお姫様だっこして寝台へ…。
でまあ一発的中というか、眉荘さん妊娠。後宮の女性が皇帝以外の子を産むわけにいきませんから、いままでのぎこちなさもなんのその、皇帝ともそういう機会を作って、皇帝の子ということにしてしまうわけです。

このちょっと後で、甄嬛のところに診察に来た温くん、それまで「娘娘」と呼んでいたのに、人払いをして、「嬛、もし自分が過ちを犯したら、友達としてどうするか」みたいなことを聞くんですね。このときの「嬛」って呼びかけが、とても印象的です。

でまあその後、甄嬛はなんとか無事双子を生むものの、なぜかその双子の父親が温くんじゃないかと疑われ、なんとか窮地は脱したものの、疑いを晴らすために温くん、自宮。自宮って、要するにアレですよ、男性機能を永遠に失わせてしまう外科手術です。出血多量で死に掛ける温くん。ショックで眉荘さんが産気づく。眉荘さんをずっと診ていた温くん以外の医者はあてにならないので、自分も死にかけたばかりの温くんがかけつけて眉荘さんの子供は無事に生まれるものの、眉荘さんは出血多量で危篤状態。温くんと甄嬛以外を人払いして、眉荘さんは温くんに「あの夜のことはお酒のせいだったのか、少しでも自分に情があったのか」と問い、温くんは「酒は少しだった。気持ちがなかったらあんなことはしない」と告白。それを聞いてびっくりする甄嬛。そして温くんの腕の中で息絶える眉荘さん。

後日、甄嬛のところに来た温くん、「家宝の壺は彼女の棺に入れた」と(ドラマの冒頭で甄嬛にプロポーズするときのあの壺ですね)。

この眉荘さんと温くんのストーリーは、サイドストーリーの中では一番好きな話です。

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2013/12/26補足
壺の件ですが、中国茶の急須的なものの名前が「茶壶」なのだそうです。