「中国時代劇を10倍楽しむ本」

 

中国の歴史もわかる!  中国時代劇を10倍楽しむ本 (三才ムック)

中国の歴史もわかる! 中国時代劇を10倍楽しむ本 (三才ムック)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 三才ブックス
  • 発売日: 2020/02/05
  • メディア: ムック
 

 というわけでこの本を買ったわけです。これ系のムックはよく買うのですが、ちょっとこれは毛色が違う感じ。私はよく「時代劇みる場合はその時代とか、実在の人物の場合はその人について、wikipedia程度でいいから調べておくとドラマがより楽しめる」ということを言うのですが、この本のコンセプトは割とそのへんです。というわけで、この本の方向性自体については、もろ手を挙げて大歓迎です。

ですが。この本の内容、肝心の時代劇ドラマについて、知識が十分でないというか、いやこれドラマ見ないで書いてるんじゃないの?と思う記述があちこちに見受けられました。

まず、一番ひどいと思ったのが、雲中歌~愛を奏でる~、というか劉弗陵のページ。ここに雲中歌のあらすじと称するものが書かれているんですが、これがまあ、ドラマ見てたら絶対にこんな間違いをしないよなレベルの間違い。時の皇帝が子供のころに再会を誓った陵哥哥であることに雲歌が気付いてなんとか宮廷に上がろうとする、なんてストーリー、どこから出てきたの?あと、孟カク(字が出ない)の出自も全然違ってるし。劉病已のキャラ紹介のところもなんかちがうし。そもそもこのドラマが風中奇縁の続編だということに触れていないのはなぜなのだろう(私が見落としただけ?)。

その他にも、人物相関図で明らかに重要な人物が抜けていたり矢印やハートの位置が違っていたりするがちょくちょく見受けられました。自分が見たドラマでこれだけ粗があるってことは、見てないドラマについて書かれてることも結構間違いだらけなんだろうな、と。

それから、これは微妙なところではあるのですが、横店影視城のことを知らないのでは?と思わせるような記述が何か所かあってですね。清代や明代のドラマで「実物そっくりな宮廷のセット」って言ったら横店の毎度おなじみ実物大紫禁城だな、と気が付く人は多いと思うのですが、ドラマ制作に力が入っていることの例として「本物そっくりの宮廷のセットを作り」みたいに書いてあると、そのドラマのためにわざわざ作ったんだってすごいよね、と言ってるみたいで、いやそれ違うから、何度も見てるからその橋とか門とか池とか、って突っ込みたくなります。

なんだろう、ドラマ愛が足りない気がする。

あとね、「宮廷女官若曦」「宮廷の諍い女」「琅琊榜」の定番3本が入ってなかったりするので比較的新しめのところでまとめてあるのかなと思うと新水滸とか入っているし、実際の歴史との関係を重視してるのかと思えば花千骨だのの仙侠ファンタジーとか、「孤高の花」みたいな架空時代のものも入ってるし。…そういえば今気が付きましたが特定の配給会社さんのがごそっとないっていう感じなのかな。あと、如懿伝のところで、これが「宮廷の諍い女」の続編であることに言及しないのはちょっとおかしいかなと。

うん、買って損するとは言いません。こういう切り口の本ほしかったし(これまで出てたムックは、歴史と絡めるとうたいながら結局役者メインで史実との差異についてはコラム的にしか触れてないようなところありましたからね)。ですが、ちょっとライターの質に疑問符が付く感じですね。