隋唐演義 おしまいまで。

あー長かった。

途中でチートすぎるキャラ設定のために主人公にあまり感情移入難くなっていたのですが、結局最後までほとんどそのままでした。途中、愛馬「黄驃」が死んだところはちょっとほろっとしましたが、瓦崗塞の中でえらくなってからは着てるものとか鎧とかが立派になっているのと反比例して活躍の場面は減るというか、基本自分は全面に出ないで他人を動かすことが多く、夫婦関係にも全く波風が立つ気配すらなく(嫁の養父である靠山王楊林が死んだというか瓦崗塞と闘って戦死した時でさえ微塵も揺らぐことなく)、時折苦悩の表情は見せるものの、ほんと後半は存在感が薄かったです。こんなにときめかない严宽さん見るのは初めてかもしれない。

で、そんな私が、主人公を差し置いて気になって仕方がなかったのが、宇文成都さんと、罗成さんのお二人。(楊広も悪くなかったんですが、この人も途中で行動がパターン化されてきてたので)

宇文成都さん、武人としてはやたら強い(結局最後まで、裴元慶と李元覇の二人以外には負けなかった)のに、精神的に不安定で、父親からは駒としか思われておらず(それでも裴元慶にやられたときは駆け寄ってきたけど、宇文化及が父親らしい態度を示したのはここだけだった)、そして最後は簒奪に失敗して死んだ父の弔いとばかりにひとりで瓦崗塞と戦い、李元覇に負けて死ぬわけですが、まあ最後まで敵方ながら気になる人でしたね。演じている陈昊さんは大秦帝国縦横で義渠王をやっていたのですが、正直義渠王の時のほうがルックス的にはタイプでした。が、複雑で屈折したキャラクターである宇文成都は、敵方ながらとても魅力的でした。

そして、罗成さん。主人公秦叔宝の従弟にあたる、北平王府の一人息子で、プライドが高く、そのせいで最初は好漢たちとも微妙な距離感があたのが、彼らが兄弟の契りを交わす時には末弟として参加。その後も王族としての立場(というか皇帝の臣下たる父王の息子としての立場)と兄弟との絆の板挟みになったり、存在を知らなかった異母兄の出現とか、二賢荘の单盈盈との恋とか、彼が瓦崗塞の反隋朝の集団に加わっていることが露見し家族が皆殺しにされたり、とらわれた時に助けに入ったナントカ公主に惚れられて盈盈が誤解したりとか、本当に後半はこの人のほうがよほど主役だったのではないかと思うくらいいろんなエピソードてんこ盛りなのですが、普段無表情な彼が時折流す涙はどれも印象的でした。最後、二人は別の道を行くことになるのですが、個人的には盈盈と結ばれてほしかったなあ。

それから、毎度おなじみ胡东さん。この方は二賢荘の主で盈盈の兄である单雄信という役なのですが、叔宝を(ドラマ中で)最初に助け、最初に兄弟の契りを結び(中の人の実年齢は胡东さんが7つ8つ上の筈ですがなぜか弟)、瓦崗塞でも中心メンバーだった彼は、反乱軍の一味ということで瓦崗塞にいて留守にしている間に二賢荘を皆殺しにされてしまい(この皆殺しを楊広から命じられたのが李淵一家で、李淵李世民はなんとかそれをせずに済まそうとするものの世民の兄弟たちが殺しはじめちゃって結局少女ひとりを残して全員死ぬ)、そのかたき討ちのために叔宝たちとたもとを分かち、最後には斬首されるんですね。

で。大切な人の死にあたって回想シーンがあるのですが、罗成が家族を殺されたところで家族との楽しかった日々を回想するのとか、叔宝さんが雄信さんの死を遠くで感じ取って回想するのとかはともかくとして、叔宝さん、義理の息子(兄の子で自分が名付け親になっていた)が死んだ時には回想なしで、馬が死んだ時には結構長めの回想がありました。いや、たしかにこの馬、洞窟に縛られている叔宝さんを助けるためにナイフ踏んで飛ばしたり、最後は追い詰められて崖からいっしょに落ちた叔宝さんが上から矢で狙われたのをかばって自ら矢を受けて死ぬんで、人間以上に大事だったのでしょうが。

登場人物は基本的には史実に沿ってるとはいえ、史実どころか原作さえ結構あちこち無視してしかも李世民が皇帝になるよりもっと手前まで(原作では楊貴妃とか出てくる玄宗の時代まであるらしい)のお話で、そして李世民は徹底してよい人として描かれているわけです。

長いし、このエピソードいらなくない?ってところも結構あったし、偶然知り合った人が実は親戚、というパターンが多いし、おふざけなシーンも少なくないのですが、基本的にはこの62回は適当だったんじゃないですかね。このペースで原作の結末までやったら150回くらいになりそうだけどそんなの付き合いきれないし、悲劇的な結末を迎える人もたくさん出てきて水滸伝みたいな後味悪い感じになりそうだし、唐朝が中国を統一しましためでたしめでたし、功臣にはそれぞれ位をさずけよう、で終わるのはテレビ的にもちょうどよいのでしょう。