宮鎖心玉 つづき

というわけで、だいぶお話が進んできたわけですが。

うん、間違いなく言える。私、晴川のほうが若㬢より好きだわ。

あるブログで宮廷女官若㬢について、さらっと「将来性のない男から将来性のある男に乗り換える女の話」と書いてあって、ちょっと目からウロコだったのです。
言われてみれば確かにそうで、若㬢が八爺と別れたのは、二人の幸せな時間が長く続くようにと(歴史を変えることになってでも)皇位を諦めることを八爺に求め、八爺がそれを拒否した(つまり悲劇的な将来が変えられないことが確定した)からだったし、四爺が若㬢に興味というか好意を抱くようになったのは、四爺がのちに皇帝になることを知っていた若㬢が他の皇子ではなく四爺にだけ好みをあれこれ尋ねたり特別な態度を取ったりしていたからだったし(そして若㬢が四爺を好きになるのは、四爺が明らかに若㬢を特別に思っていることを十三爺から聞かされてからだし)。
まあそれが悪いとは言わないにせよ、なんか釈然としないというか、少なくとも、感動のラブストーリーなんかじゃないと思うんですよ私は。
それに、結局最後は、四爺改め雍正帝と向き合うのではなく、彼の元から逃げ出して彼への愛を自己完結させる道を選ぶわけです。それもまた身勝手だし、何よりもあれだけ若㬢のために犠牲を払った十四爺がかわいそう過ぎる(いやこれは私が林更新くんと十四爺のファンだからというのもありますが)。

一方の晴川。八と四の両方から思われるのは同じなんだけれど、四爺との間に想いが通じ合った直後でも、素言が四爺に想いを寄せていたこと、四爺は自分が皇位につくためにその素言の想いを利用していたこと、その中には晴川を殺せという命令もあったこと(それを素言は晴川への友情から実行できなかったこと)、そして、皇位より晴川を選んだ後でさえ、(その直前に自ら命を絶った)素言を利用していたことに何の心の痛みも感じていないこと、などを知ると、「こんな心の冷たい人間が皇帝になっても民が苦しむだけ」と考え、歴史を変えることになってでも四爺が皇帝になることを阻止しようと決意する(そのために「お前のためなら皇位なんかいらない」という八爺に「情に篤いあなたこそ皇帝にふさわしい」とけしかける)、というのが昨日までの流れ。
(ちなみに、初回の冒頭で現代人の晴川は雍正帝ファンの歴女であることが明かされています)

多分だけど、実際にはずっと想っていた相手が自分のために大事なものを諦めたという直後では、その相手がどんなに冷酷な奴だとわかったとしてもそんなに簡単に自分の想いをなかったものにはできない人のほうが大部分だと思います。そこらへん、晴川のキャラクターはいかにも作り物っぽいというか、明快に割り切りすぎだと感じる人はいるだろうと思います。

一方の若㬢は、怖れながらも愛しているから離れられない、とか、愛しているけれどこれ以上傍にいたら傷つけあうだけだから離れよう、とか、複雑で屈折した想いを抱えているように見える。自分の内心を掘り下げているようにも見えるし。だからそういうアンビバレンツな想いを抱えている若㬢に共感する人も、少なくないのだろうとは思います。

ただね、私個人は、若㬢の「考えていることやってることが結局は全部自己完結」なところって、猛烈に気に入らないんですよ。まあ私自身が、どっちかというと「自分が相手を好きでいられればそれでいい」タイプなので同族嫌悪かもしれませんが。

でもって、実際にタイムスリップしたことがある人はいないので(いるのかもしれないけど少なくとも私は知らない)、その気持ちを知ることはできないわけです。ならば、どうせフィクションなんだし、うじうじとフラストレーションのたまる自己完結志向よりも、ちょっとスカっとするくらいに明快でもいいじゃないですか、と思ったりするわけですよ(于正パターンにはまっている、ともいえるのかもしれない)。

例によってオープニングとエンディングでネタバレしてる部分から鑑みるに、この先八爺とのラブストーリー展開となるのではありましょうから、ここからまた見方が変わる可能性も大ですが、少なくとも今はそんな感じです。

そして、見慣れてくると、冯さんの辮髪が結構かっこよく思えてきました。

それからそれから、早く出てこい茅子俊。