「魔道祖師」と「陳情令」について思ったことなど

というわけで、いっこ前で魔道祖師を4巻だけ読んだけどオススメしないと書きましたが、陳情令全編の中であたしがどうしても気になっていたこと、義城篇の薛洋と暁星塵の関係についてちゃんと理解したいと思って、頭から全部読みました。うん、kindle版でも1巻1500円以上するので結構な出費だったけど、後悔はしていません。面白かったし。

でまあ、4巻から読んだので結末がどういうものだかわかっている状態で頭から読んだわけですが、そうするといろんなことが見えてきますね。多分予備知識がないと見逃してしまうようなところに、いちいち蓝忘机の気持ちの動きが現れてるわけです(魏婴が蓝湛に酒飲ませて自分を指差したら酔っぱらった蓝湛が「私のものだ」と答えて、それを魏婴の方は、たまたまその時に蓝湛の剣を背負っていたからそれのことを言ったと思うところとか、ちょうどいいすれ違い加減ですね。そういうのがたくさんある)。

一番びっくりなのは、

魔道祖師はまごうかたなく恋愛小説なんです。
自分のせいで(と本人は思っている)一度喪ってしまった相手に尽くす愛を貫こうとする男と、美しく高潔な彼を自分の邪な心で汚したくない男の、両片思い状態のクライマックスが宿屋で風呂桶をぶっこわすあたり→気まずくなって外に飛び出した魏婴が観音廟で蓝曦臣から弟の気持ちを知らされ、その後現れた蓝湛に「お前と毎日ヤリたい」と伝える場面ですね。ここは本当にいい場面なんですが、

これ、「陳情令」ではまるっとないわけですよ。ドラマはあくまでもブロマンスで、二人の関係は「知己」なわけです(まあ中国時代劇における「知己」の意味って日本語で考えるよりはるかに強くて深いわけなんですが、だとしても)。蓝湛の魏婴に対する気持ちも、深い愛ではあっても恋情ではない。蓝湛のやきもち(これ本当にかわいい)も、魏婴の苦悩も全然登場せず、つまり、原作における一番の核心部分ってそっくり無い物になっちゃってる。

にもかかわらず、「陳情令」のドラマとしての完成度は高く、人間関係は濃密なんですよ。一体全体、どうしてここまで密度の濃い話が作れるのか。

すごい手放しでべた褒めしてますが、それくらいすごかったですね。

 

で。冒頭に書いた「義城篇の薛洋と暁星塵の関係について」なんですが、結局よくわかったようなわからないような、そんな感じです。薛洋はサイコパスというか、快楽殺人者という設定なのですが、それでもここでの暁星塵への執着には、彼なりの人間らしい思いがあったのではないか、と思っておくことにしました(飴が人の心の象徴というか)。

 

まあ気が向いたらまた追記しますが今回はこんなところで。

<<追記>>

ついに二次創作に手を染めてしまった。

Another Words に置いてあります。

創作に頭を使ってると編み物が全然できない。今考えてるのは「薛洋を救いたい」です。

<<追記2>>

また読み返しているのだけど、蓝忘机は自分が男性(ただし多分魏婴限定)が好きであることを実は結構早い時期から自覚しているのではないかというのがちらほらありますね。一番はっきりしてるのは玄武洞で怪我の手当をしている時に魏无羡から「俺は男に興味はないからお前の服を脱がせても何もしない」みたいなことを言われて不機嫌になるあたり(その時は他にもいろいろ言ってたので、当然のことながら魏无羡は不機嫌の理由をそっちだと思っている)だけど(ちなみに玄武洞の時は魏婴が绵绵から匂い袋を貰ったりしてる往きの道、女性に対する軽薄な態度に蓝湛激おこだったけど、あれって軽蔑じゃなくて嫉妬だから、少なくとも自覚したのはそれより前)、そのずっと前にも、最初の雲深不知処での座学のとき、魏无羡から兎を2匹もらったらその兎が交尾的なことをしていて、でも実は両方オスだったっていうのがあるんですけど、あれも何かの暗示ですよね。

あと、沢蕪君が両親の話を魏无羡に聞かせるシーンで、蓝氏にもそんな情熱的な人がいるんですね、的なことを魏无羡が言うんですが、その話の中身がまさにそのまま「雲深不知処に連れ帰り隠す」で、蓝湛、実はその情熱的な父親にそっくりなんだなあ、と。

追記3

薛洋を救いたいプロジェクトが無事完結したので、pixivに投げました。

www.pixiv.net