若曦と甄嬛

で、まだ若曦の話を続けます。

宮廷の諍い女の雍正帝にはあまりいい印象がないというか、正直「こんなスモールアスホールなオヤジ、いくら皇帝でも、というか皇帝だからこそいやだ」と思うのですが、宮廷女官若曦の雍正帝にはそこまでいやな印象はない。むしろ、若曦に対して、「どうしてわかってあげないのよ?!」と思うことしばし。

いったいこの違いはどこからくるのだろう、キャスティングの違いか?

確かに陳建斌とニッキー・ウーを比べたら(ホントにこの二人同い年なんだろうか)ニッキー・ウーの方がまだオッサンくささというのはない分いいのだが、単にそれだけじゃないんだということに気が付いた。

あたしね、若曦に感情移入できないんですよ。だから、若曦が十四皇弟に(形の上で)嫁いでからも「四爺、四爺」って言ってるのがなんか十四皇弟がかわいそうすぎるし、一方で、雍正帝の苦しみとか心の傷とかに寄り添おうとしない若曦の態度を見ていると、雍正帝がかわいそうになってくるんです。

たぶんだけど、若曦は「両親に愛されて育った」ゆえの、「兄弟は/家族は仲良く暮らすべきだ」っていう価値観の人なんですよ。だから雍正帝が兄弟でもかまわず粛清していくことに対して、その裏にある皇帝の孤独とか、愛するものを傷つけられた恨みとかに共感というか寄り添うことができず、ただ恐怖のみを感じてしまう。
(にもかかわらず、自分自身は粛清の対象とならないであろうと踏んでいるのか、好き勝手なことを言っている。このへん、ずいぶん甘えていると思う)


まあそもそも、若曦って何がしたいのかわからない。元の時代に戻ることを早々にあきらめたっぽいけど、その後の八阿哥との関係もいくら不仲とはいえ姉の夫だし、四阿哥のこともあれだけ避けていたのにころっと参ってしまう(正直、八阿哥と別れてからどういう経緯で四阿哥にひかれるのかの描写がいま4くらい足りないと思う。なんで?感がぬぐえなかった)。自分から望んで紫禁城を出るために十四皇弟の力を借りるのに、その十四皇弟の前では四爺四爺って恋しがってばかりいるし。

なんかほんと、イライラします。

(そもそも、そんなに何人もの皇子から心を寄せられるほど魅力的であるようにも見えない)

んじゃ、甄嬛はどうなのさ? あんないい男に「ただ一人の妻」とまで言われたのにそれを捨てて後宮に戻るとかどうよ?的な考えかたは、なぜか私にはなかった。たぶんだけど、父親が流刑先で病気になった、というのが、実は運命のターニングポイントだったのではないか。仮に父親が元気であったならば、もうちょっと果郡王を待つこともできたかもしれないし、少なくとも後宮に戻るという選択肢は(ないとはいわないまでも)だいぶ小さかったのではないかと。

それに、果郡王あらため果親王の最後の場面、あそこで甄嬛は自分が毒を飲もうとするわけですよ。そこで甄嬛が死んだら、果親王との関係を認めたことになって果親王も処刑されていた可能性大、もちろん家族も子供たちもそれなりの処刑されることになる。それでも自らの手で果親王を殺すことには耐えられないかった甄嬛の、愛に殉じようという気持ちは、自分には理解できるような気がするんです。


にしても、もし諍い女のほうの雍正帝がニッキー・ウーだったらどうだったんでしょうね。あんなに憎々しい皇帝になっていたかどうか。

やっぱりキャスティングの問題?