中華ドラマで気になっていることなど

というわけで、中華ドラマは面白いのですが(衣装とかの豪華さがすごい)、気になる点がないわけではありません。

吹き替えだったら疑問にも思わなかったことなのかもしれませんが。

これまでに言及した二つのドラマ、アジア・リパブリックというところが日本版の制作にかかわっているわけなのですが、ちょっといろいろといいたいことがあります。

まず、邦題。たとえば「宮廷の諍い女」は、「美しき諍い女」というフランス映画(?)のタイトルにインスパイアされた的なことや、「甄嬛伝」では新聞の番組欄で目をひかない(漢字も新聞で使えない字だから「シンケイ伝」とか「しんけい伝」にせざるをえない)みたいなことが、アジア・リパブリックの公式ブログには書かれているわけですが。

でもねえ。このドラマのテーマは、皇帝という強大な権力の下で生き残るためには真実の愛を捨てるしかなかった運命の残酷さなわけで、それを「皇帝をめぐる女の争い」に矮小化しちゃってるこの邦題は、はっきりいってちょっとお粗末だと思います。

「宮廷女官若曦」のほうは、これも「歩歩惊心」じゃ意味が通じないとか、「宮廷女官チャングムの誓い」にインスパイアされた的にブログにあったんですが。

いや、チャングムの邦題だって、予定より女官編が長くなっちゃったとはいえ、ストーリーのメインは医女になってからなわけだし、ちょっと邦題ちがくない?感は否めなかったのだけど、それでも「チャングム」って現地読みの名前が生かされているのでまだいいよ。

宮廷女官若曦(きゅうていにょかんじゃくぎ)って。若曦の読みはピンインだとruoxiみたいな感じ(耳で聞くとほぼ「ルーシー」に聞こえる)で、「ジャクギってどこの誰だよ」みたいな違和感がどうしてもぬぐえません。ストーリーも、確かに女官やってる期間は長いけど、主題は女官としての仕事じゃなくて、皇子たちの権力闘争に巻き込まれることとか、現代女性が側室という男女のあり方でどう自分の気持ちと折り合いをつけるか、みたいなところにあるわけで。チャングムの場合は復讐譚であると同時にサクセスストーリーでもあるわけなんだけれど、それとは全然性質の違う話で無理やり共通点を引っ張り出してタイトルにするのは、なんというかちょっとね。

(じゃあどういうのがいいのか、と言われるとちょっとまだそこまで考えてないけd)

あと、字幕の翻訳も、いろいろと不満が。たとえば雍正帝が甄嬛のことを「嬛嬛」と呼ぶのですが、これの字幕、ルビが「けいけい」です。実際の発音はほぼ「ふぁんふぁん」なんですけど、ここらへんの語感の違いにちょっと無神経すぎやしないでしょうか。甄嬛が眉荘さんを、玉檀が若曦を「姐姐(じぇじぇ)」って呼ぶのですが、それは「眉荘さん」「若曦さん」と訳されてます。さん付けと呼び捨てとで「姐姐」と「妹妹」を訳し分けているようなのですが、そこらへんもなんか、微妙にニュアンス違っちゃってるような気が。

とまあ、文句ばっかり書きましたけど、いいドラマをどんどん日本に紹介してほしいと思うので、アジア・リパブリックさんには頑張ってもらいたいものです。

かしこ。

(追記)

相互主義というか、表音文字があって日本人の名前を日本読みで読める韓国に対しては韓国人の名前を韓国読みで読むけれど、表音文字がなくて日本人の名前を中国語読みで読む中国に対しては中国人の名前を日本読みする、っていうようなルールが(暗黙だか明文化だかはしらないが)あるのは一応知ってはいるんですけどね。でもやっぱり、固有名詞は(振り仮名という文化を持つ国として)現地音に近いルビを振れないものですかねえ。